経営にブレイクスルーが起これば、売上の桁が変わる。
この連載では、現実に桁を変えた経営者にインタビューし、どのように桁を変えたのか、
そのプロセスでいかなる課題に直面し、どう向き合ってどう乗り越えたかを解き明かしてゆく。
■ 旭酒造株式会社(獺祭の蔵元)
想い:地酒、純米大吟醸「獺祭」の製造販売を行っています。酔うため、売るための酒ではなく、味わう酒を求めて、真に美味しい酒を目指しています。
設立:昭和23年1月23日
資本金1000万円
業務内容:1. 酒類製造および販売
2. 醤油製造及び販売
3. レストランの経営
4. 前各号に付帯する一切の業務
URL:https://www.asahishuzo.ne.jp
一つ言えるのは、「美味しいお酒を造ることに本気だ」ということかな。
本気で美味しいお酒を造ろうとすると、必ず失敗するリスクは増えますよね。
だけど、追いかけて失敗しているってことが、お客さんにはある程度伝わるんですね。
お客さんは私たちがやってるチャレンジや失敗は丸裸で見えると思うんです。
それは、なかなかプロ同士ではわからないんですよ。流通の方にもわからない。
広告宣伝会社の方にもわからない。
一般のお客さんでないとわからない。
ちょっと面白いというか変だけど、企業って社会から見たときに丸裸になってんだなぁと常に思いながら経営してます。
そうですねぇ。
大きくなって大企業病にかかりつつありますね。
だけど、この数年間は、それを手術できるようになっても来てる。
実際、私が目の前でその手術をして見せたり、実例を社員が学習をしているという状況ですね。
例えば製造で言うと、お酒の製造法で生酛(きもと)と言う作り方がありまして、「それを作らない」とこれまでは言ってきたんですね。
それは何故かと言うと、生酛は非常に複雑で、うちの会社でなくとも生酛がおいしい有名な二本松の酒蔵があって、生酛を飲みたい人はそこのお酒を飲めば良いと言ってきました。
ですが、やっぱり生酛の要素も入れてみるといいなぁと思って、2年か3年前から生酛をちょっと取り入れ始めました。
1割とか2割の話です。
すると社員から、「社長!生酛は絶対やらんて言ってたじゃないですか!」って言われるんです。
「うちの会社は朝の話と夜の話が違う」って。
そうだよ。違うよ、って(笑)。
美味しいお酒を造るのに、これがいいと思ったらそれは変えていくんで、。
それは目の前で見せていきます。
そうですね。
いいと思ったら、こだわらないで変えていきます。
まず経営者としての判断として言うと、誰に任すかが大きいですよね。
非常に優秀な職業経営者を、という手はありますよ。
ただし社内からって考えた時に、やっぱりいい時はやれそうなんですけど悪くなったときに経営者は逃げない、ってのが1番大事なんです。
だから息子が適任でした。
逃げ場がないから。
そうすると、ある程度“どうにもならなくなって譲る”のではなく、私が今ある程度わかってるというか、私が動ける時に譲るというのが1番いいだろうなぁと考えて、息子に社長を譲りました。
特に決めてないです。
まあ残念ながら会長ですから命令権は無いので、せいぜい批判することぐらいしかないんですが、社内での批判の舌鋒は1番鋭いですね(笑)。
今よく、海外で日本酒ブームなんて言われますけども、実際に、海外で日本酒を飲まれているかと言うと、飲まれてるのは、ほとんど安い日本酒なんです。
アメリカだと4号瓶1本で大体5ドル90セント。
こんな酒出してたらそのうち売れなくなる。
今の現状だと、日本から行っている日本人、それからアメリカでグリーンカードをもらってるけれどもまぁ日本人、日本びいきのアメリカ人、日本酒が好きなアメリカ人。
まあ飲むのはこれぐらいですよね。普通のおいしいものが好きなアメリカ人は飲んでないんです。
やっぱりアメリカ人が飲んでも「おいしいね!」と言ってもらえるお酒を、アメリカで出さなきゃいけない。
だから、そのために日本から輸出してたんじゃダメで、アメリカに酒蔵を作って、アメリカの酒として造る必要がある。
それこそ、ソニーは一時期アメリカのブランドだとアメリカ人は思ってたみたいな状況にしないと、と思ってます。
だから投資をして、日本酒のマーケットを海外で作っていかなければいけないわけです。
フランス人にとってはワインっていうのはね“輝く天上の星”なんですね。
一方で、フランス人にとっての日本酒は、わかりやすく言うと、東洋の蛮族が作った、わけのわからん酒ですよね。
だから高級ホテルやレストランで「まぁ使ってやってもいいよ」と、なる。
でもこれじゃぁまずい。
ということで、ジョエルロブションさんと組んでお店をフランスに出したわけです。
だから、儲かるからというよりも、フランスの中での日本酒のマーケットを作っていく打開策として“獺祭ジュエルロブション”を出店したという位置づけなんですね。
3億の会社が10億になるのは全然違いますよね、10億が30億になるのも違いますね。
30億から100億になるのは、これは同じ形でいけるんじゃないかなと思います。
売上そのものはね。
ただし、問題は“売上の成長に合わせて会社が対応できない”んですよね。
だから3億の会社と10億の会社ではやっぱり組織が違うんですよね。
10億と30億も違う。
このことを1番気にして経営してましたね。
おそらくやっぱり組織を作れないと、10億になってもまた下がってくるだろうし30億になっても下がるだろうと思ってました。
組織を作っていくには、本質をつかむことが大事なんだと思います。
本質をつかむというか、本質を洗い出すということが。
自分たちの会社の本質、自分たちのビジネスの本質、何のためにやっているのかをとにかく追求していくのが1番だと思いますね。
やっぱり美味い酒造りを追いかける、ということ。
とにかく美味しいということに対して、一生懸命追いかけていくことです。
インタビュー日:2018年8月30日(木)
インタビュアー:株式会社ピグマ すごい会議コーチ 太田智文、石田博士、五十嵐淑貴
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