経営の桁を変えるには?
株式会社エーアイ 代表取締役社長 吉田大介様インタビュー(2/3)

経営にブレイクスルーが起これば、売上の桁が変わる。

この連載では、現実に桁を変えた経営者にインタビューし、どのように桁を変えたのか、そのプロセスでいかなる課題に直面し、どう向き合って、どう乗り越えたかを解き明かしてゆく。

■ 株式会社エーアイ

2003年創立。「音声技術で拓く21世紀の文化」を企業理念に、音声技術の応用開発・サービス化を通して、音声情報の新しい文化を創出し、生活文化の向上に貢献する。

2014年2月にJapan Venture Award中小企業長官賞受賞。

そして2018年6月、東証マザーズへ上場。私たちAI(エーアイ)は音声合成に特化した、日本唯一の会社です。

2018/08/24 インタビュー

第二部:スタートアップから上場までの困難とブレイクスルー
「人生の最後の勝負。上場するか、売却か?」

〜活動が成果となった瞬間〜

当時の事務所が田町の出資元の会社の空いてるスペースに入っていたのですが、もう早く抜け出したくて(笑)。

それで実際に出資いただいた年の翌年に1.2億円の売上になりました。やっぱり1億の壁ってあるんですよね。1.2億円ぐらいの売り上げで約2千万の利益がでた。人数9人ですから。それですぐに飛び出して、今の春日のビルの9階に来ました。そこがひとつの分岐点ですね。

その時にちょうど三鷹市が防災用の無線に音声合成を使いたいという話が出たんですね。それでコンペに応募しました。

コンペになった時に AI ボイスだけは、パターンがあれば文章をきれいに喋れると言うことで採用をいただいたんですね。

これをきっかけに、ひょっとしたら防災用の無線という分野に音声合成がこれから入っていくんじゃないかと考えまして、関東圏100以上の自治体に営業に全て回りました。

それでわかったことが、それぞれの自治体は防災用の無線システムを入れるのは、メーカーだったんですね。それで、パナソニック、沖電気、日立国際、東芝、NECなどに営業に行って、弊社のシステムを採用いただくことができました。

そして、そのロイヤリティをいただく構造ができたんですね。この構造ができたのが6年目です。

最初の5年間は本当に創業期できつかった。でも、このような仕組みが構築できた翌年には売上が1.8億円になりました。

 

そして次に、第10期ごろにスマホがダーンと広まりまして、Siriが入ってくるような話が入ってきました。いわゆる音声対話ですね。これに各メーカーが対応しないといけない。

一番早く反応されたのはYahooですね。 Yahooは音声アシストっていう技術を持っているんですけど、その音声対話の技術に弊社のAITalkを使ってくださったんです。それは今でも入っています。

その次に docomoが“しゃべってコンシェル”“しゃべってキャラ”などを始めました。その時のコンセプトが色々なキャラの声で喋らせたいということだったのですが、少しの録音(1~4時間程度)でその方の声が作れるということが、弊社の専売特許の技術みたいな感じでしたので、すぐに採用いただくことになりました。

そこで一気に売上が3億を超えて、その次の年の11期目に しゃべってキャラの声を300種類ぐらい作らせていただきました。

 

ここで一気に利益が出る体制になったのです。

「ここまで来るまでにどんな学びや教訓を得ましたか?」

ここまでの数年間の経営の中で、2度の倒産の危機やお金の面で死にそうな目にあいまいたので、内部留保を大切にしています。キャッシュを社内に貯めないと。

キャッシュがなくなるということはすぐに会社が潰れてしまうということというのは実感していますので。なにせ通帳を見たときに残り20万しかないという時もありましたから

それだけは何とかしたいと言うことが叶ったんですね。一年分の運転資金が会社にあれば会社は絶対に安定してやっていけると。

 

11期も利益が出た時に、「じゃあ今後どうするんだ?」というのを考えるようにした結果、12期に IPO を目指そうとなりました。

「IPO を目指そうと思ったのはどういった理由からですか?」

人の採用ですね。当時は本当に人が来ない。

弊社は組込み系と言うような開発者が必要なんですね。ただ、その組込み系の技術者って日本中や世界中で取り合いなんですよね。そうすると本当に来てくれないんですよね。例えば中途採用でご本人が来られてやりたいと、でもしばらくしたら、「辞退します」と。新卒の場合だとご両親が反対するだとかそういうことがずっと続いていたんですね。

ですが、きっと上場したら採用、信用力と認知度が変わるだろうと考えました。

弊社は、設備投資をすると言っても、投資するのは人しかいない会社ですから。

「IPO後、どのような変化になって現れましたか?」

紹介会社からの紹介とスカウトメールを送っているのですが、応募者からの反応が全然違いますね。紹介会社からの紹介っていうのも、いい人が増えました。

「一方で、上場に至るまでに困難はありましたか?」

それは大変でした。例えば、管理というところで社内の仕組みなど、上場に向けて管理体制を作らなければいけない。内部統制であったりコンプライアンスであったり、いろんなこういうことをきっちりできないとだめだよって。

他には審査に向けての証券会社とのつきあいなど。最後の一年は地獄ですね(笑)。

あれを楽しむことができる人がいるとしたらすごいなと思います。

 

私は年齢も年齢だし、1回勝負だと思っていたんですね。

これがダメだったらもう上場をあきらめて違う方向で、事業を売却することも考えなければいけないと思ってました。

とりあえず突っ切りましたが、まあきつかったですよ。

「上場されて想定と違ったことは何ですか?」

それまで関わったことがない人とのお付き合いがたくさんできるわけです。例えば機関投資家とか、証券会社の人や、信託銀行の人。それらが思った以上に大変ですね(笑)

 
インタビュアー:株式会社ピグマ すごい会議コーチ 太田智文、石田博士、太田登揮
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