経営の桁を変えるには?
株式会社エーアイ 代表取締役社長 吉田大介様インタビュー(1/3)

経営にブレイクスルーが起これば、売上の桁が変わる。

この連載では、現実に桁を変えた経営者にインタビューし、どのように桁を変えたのか、そのプロセスでいかなる課題に直面し、どう向き合って、どう乗り越えたかを解き明かしてゆく。

■ 株式会社エーアイ

2003年創立。「音声技術で拓く21世紀の文化」を企業理念に、音声技術の応用開発・サービス化を通して、音声情報の新しい文化を創出し、生活文化の向上に貢献する。

2014年2月にJapan Venture Award中小企業長官賞受賞。

そして2018年6月、東証マザーズへ上場。私たちAI(エーアイ)は音声合成に特化した、日本唯一の会社です。

2018/08/24 インタビュー

第一部:創業からスタートアップ時代の困難とブレイクスルー
「いい商品だけど売れない」

Q.吉田社長が「音声合成技術」に着目したきっかけを教えてください。

私は創業前の1980年代にTISというSIerにいたんです。その時に出会った研究所がATRで、そちらの仕事をたくさんさせて頂いていたんですね。

ATRは今で言うところの“AI”で、基礎研究をやっていまして、特許であったり、いろいろな良い研究がたくさんありました。ただし、そのままでは世の中には出て行かないんですね。それをきちっとサービスや製品にしてやらないといけない。

そのために、大手企業に機材を買っていただいて使っていただくという橋渡しがいるわけで、その仕事をやってくれないかと言っていただいてATR の仕事をするといった経緯がありました。

 

実際に ATR の中に入っていろいろ研究成果を見て面白い内容がたくさんありました。その時に出会ったのが『CHATR』という音声合成ですね。それに出会った瞬間、めちゃくちゃ面白くて、これで何でもテキストがいろいろな人の声になるっていう可能性が見えたんです。まだまだ不完全ですけど、これを世の中に広めたい気持ちになりましたね 。

「そのあと、どうなったんですか?」

それで、当時、音声合成の研究をしている大手メーカーに「この音声技術を使いませんか」と聞いて回ったんですが、どこも買ってくれないんですね。

当時のライセンスを提供する方式がメーカーのやり方と合わなかったんです。

そこでライセンス提供のやり方を変えようと社内で提案したのですが、「それは私たちが持ってる技術ではないからダメだ」ということになりました。 これじゃあ売れないと思って色々考えたんです。

「だったら製品を作って売ればいいんじゃないか!」

と思い、いわゆる事業計画書もどきをExcelシートで5枚ぐらいで作ったところ、研究所内でGOがかかって、「やれ!」と。それで予算が付いて、音声合成の製品を作ったのです。

 

そして、出来上がった製品を、しゃかりきに売り出そうとしたのですが・・・これがまた売れないんですね。

何故かって言うと、音声合成という技術が世の中に全然認識されないんです。

そこで色々考えて、電話系のサービスに可能性を感じ、あらゆる銀行に営業に行ってヒアリングをしたところ、人の名前と住所と数字が綺麗に読めるテレフォンバンキングで、自動の音声応答のところに当時の技術が使えると教えていただくことができました。

そこで、人名、地名と金額を電話口で自動で音声を読み上げる音声合成パッケージ(ウィザードボイス)をつくったんです。それを作りこんでですね、ざーっと改めて銀行に営業に行ったんです。

そうすると銀行のSIをやっているSIerを紹介いただき、2社が弊社のウィザードボイスを「採用してもいいよ」と言ってくれたんですね。それが2002年です。

そして、契約直前まで行った時にATR の社長が変わることが起き、事業をやめるという話が2003年の1月に起こったんです。

そしてもう1つ同じ時期に、あるメーカーの上層部の方から自社の音声技術の商品を販売するために、「新しい会社作ってくれ」と言われていました。それで少しは出資もすると。

それで、やるんだったら今しかないと思い、会社を作ったというのが創業の経緯です。

 

2003年の4月1日に後楽園の駅にカバンごろごろと引っ張りながら、当時僕と一緒に営業をしていた若い衆を1人連れて2人で始めました。知り合いの事務所の机を2つ借りてのスタートです。

〜2回の倒産危機から得た教訓〜

「御社のAITalk®というサービスはこれまでの音声合成サービスとの違いであったり、他社サービスとの違いはなんですか?」

技術でいうとコーパスベースと言いまして、人の声を録音して、細かく音素に、母音と子音の細かい波形に分けバラバラにしてですね、それで音声辞書を作る。その音声辞書から適した音素をつなぎ合わせて音声をつくる技術が強みです。

これをベースに少ない録音量でどんな人の声でも作れる。

そして喋り方もその人の喋り方を再現できる。

それが、AITalkの特徴です。

「AITalkが出来てからは順調だったのですか?」

いいえ。ちなみに、そのAITalk®ができてから、弊社は2回つぶれかけています。

「えっ、そうなんですね。その2回はどんなことがあったんですか?」

1回目は1年目で、黒字なのですが、入金が間に合わずに黒字倒産しかけました。

やっぱりマーケットがないので本当にうまくいかなかったんです。技術も全然知られていないから、なかなか売り上げにならない。

その時は信用協会のところからの貸付があったから乗り切れました。そして、当時借りられるものは全部借りたんですね。

そうすると1期目が終わった時に少しだけ黒字になって、2期目は4000万円ほど借りることができたんですね。だけどもそれは赤字なんですね。そこにはすべて連帯保証人のハンコが押されているという恐ろしい話があったんです。

 

2年目の時に、ちょうど携帯電話のコンテンツで“着声”というのが流行りかけていたのですが、その着声の声を精細に、キャラの声に提供したらうまくいくと考えました。

この辺りの活動をする中で当時、ベンチャーキャピタルを紹介していただき、弊社の話をしたら「それは面白い」と言うことで、2005年の4月の末に2.4億円の資金が集まりました。

それでちょっと調子に乗っちゃいました(笑)。

開発の人は入れるわ、営業の人が直接は良い人が来ないのでアウトソーシングで3人来てもらったんですが、結構なコストがかかったんですね。

 

ところが、またなかなか売れないんですよね。本当に売れない。

それで2億円なんて2年経ったらなくなっちゃうわけですよ。

これが2回目の倒産の危機です。

 

そして、もう一度資金調達をしようとしたんですね。

次は事業会社を色々と紹介いただいて今の株主と出会い、2度目の資金調達をおこないました。

その時に、やはり18人ではどうやっても給料が払えないというようなことで、社員には正直に、「給料をどこまで下げてもいいですか」とお話しすると、やはりみんな辞めていきました。

これで9人になってそこから再スタートしました。そこからコツコツコツコツと進めていったんですね。営業は僕一人で回りました。というのが2008年くらいまでです。

 
インタビュアー:株式会社ピグマ すごい会議コーチ 太田智文、石田博士、太田登揮
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