経営の桁を変えるには?
株式会社ヤッホーブルーイング 代表取締役社長
 井手直行様インタビュー (2/3)


経営にブレイクスルーが起これば、売上の桁が変わる。
この連載では、現実に桁を変えた経営者にインタビューし、どのように桁を変えたのか、そのプロセスでいかなる課題に直面し、どう向き合って、どう乗り越えたかを解き明かしてゆく。

インタビュー回答者:井手社長(てんちょ)、熊谷さん(どんちゃん)
インタビュアー:石田、太田

■ 株式会社ヤッホーブルーイング

代表: 代表取締役社長 井手直行
設立:1996年
業務内容:クラフトビール製造および販売

住所: 本社
   〒389-0111長野県軽井沢町長倉2148

    佐久醸造所
   〒385-0009長野県佐久市小田井1119-1

    佐久事務所
   〒385-0009長野県佐久市小田井1077-14 アース精工様内

    東京営業所
   〒151-0051東京都渋谷区千駄ヶ谷1丁目9番1号ヒルズ葵402

   URL:https://yohobrewing.com/


第二部:ヒット商品を連発する秘訣。それは、多様性と自主性。そして愛。


石田「そもそも御社のとてもユニークなビールの名前は、どのようにして決めてるんですか?」
てんちょ(井手社長)
「まず我が社には製品開発の専門チームがないので、毎回プロジェクトチームを組むんです。こういうビールを造ろうと思うんだけど一緒にやってくれる人いますか?と。希望を募ると、すぐに「私やりたいです」と手があがって人が集まるんですよ。基本は手があがった全員でやっていますが、あんまり多いと大変なので6〜8人で絞ってやります。最初にターゲットを決めてコンセプトを決めて、コンセプトに沿って、味の方向性やネーミング、デザインを決めていく。我々はキャラクターを前面に出すようにしているので「じゃあそのコンセプトに合うキャラクターはなんだろう」とか「ネーミングも一人100個考えてきてね」みたいなことを何回も何回もやって、トータルで1,000個くらい案を出したところで、最後に絞り込んでいきます。
そして、コアターゲット層として設定した方に個別にインタビューをして、支持が高いものがあればそれにしよう、と。そんな決め方です。で、終わったらプロジェクトチームは解散します。」

 

太田「新しい製品の開発を、プロジェクトチームで実現するっていうのがすごいですよね。」

てんちょ
「我々は製品開発に限らず、何事にもそんな感じなんですよね。製品開発以外でも部門横断的なことで誰かが「こういうことをやりたいんで人が足りないので手伝ってください!」って言うと、みんなが「ハイハイ!」と手をあげます。手が上がりすぎて部門のリーダーと調整して「本当に大丈夫なんだよね?」みたいな勢いで手があがる。で、やっぱり挙手する人はそのことに興味があるし、努力するんですよね。私が指名するんじゃなくて、やる気がある人がやったほうが良いんじゃないかと思って、今のやり方に変えました。
やる気がある人で手をあげてやると、部門横断的に集まってくるため、他部門の知識がないのでお互い教え合いながら理解していくまでが大変だったり色々困難もありますが、このやり方の良いところは“手を挙げた本人が絶対に諦めない”ということ。最後までやり切るんです。努力した分が自分の知識になるし、うまくいったら経験にもなって、喜んでまた次のプロジェクトに参加しよう、という前向きなアクションになっていく循環が顕著に見られたので、このやり方に完全に切り替えました。
今はもう会社の中で頻繁にプロジェクトが立ち上がっています。例えば営業チームだけでやっているとそんなに出ないアイデアが、バックオフィスの部門などの違う部門の人間が入ることによって、イノベーションが起こりやすくなっている構図になっています。」

 

太田「その文化は意図的に作ったんですか?」

てんちょ
「はい。意図的ですね。最初は「こんなに時間がかかっている活動は無意味だ」とか「効率的ではない」とか「一向に何も決まらないのではないのか」という不満が出たりしていたんですけど、成果が出るのをじっと待ちました。だって指名しても上手くいかないんですから(笑)。」 

 

石田「昔の状態から今の状態になるまでにどれくらい掛かりましたか?」

てんちょ
「軌道に乗るまでに2〜3年は掛かりましたね。」

 

石田「その間、じっと待たれたのですね。

   てんちょが、経営をする上で大切にしていることは何ですか?」

てんちょ
「大切にしているのはいっぱいあるけど、真っ先に思うのは社員ですね。”顧客は友人、社員は家族”という会社の価値観がありまして、本当に社員とは家族のように向きあって仕事をしていくということを大切にしています。今話したことを含めて、経営理念はとっても大事にしていますね。経営理念っていうのは、ミッションが1番の上位概念で、ミッション、ビジョン、ガッホー文化、価値観。これらをまとめて経営理念って呼んでいます。ここが会社の根本的な考え方や姿勢なので、これを常に見本にして進めているし、これが根幹ですかね。」

 

太田「“てんちょ”の仕事って何ですか?」

てんちょ「僕の仕事は、抽象的な言い方をすると、みんなが働きやすいような環境を整えることですかね。」

 

太田「そのために、てんちょが意図的にやっていることは何ですか?」

てんちょ
「意図的にやっているのは自分自身が経営理念を体現していることです。実行してみて、それが普通に行われているということは私がやらないとですよね。上から目線ではなく、みんなとフレンドリーに話をしたりだとか、形だけではなくて本当に社員が困っていることの相談に乗ったりだとか、仕事以外のところでもプライベートでも何かあったら皆で協力しながら、何かもっとみんなでうまくいくことないかね、って相談に乗ってあげたりとか。そういった対応をすると他のリーダー陣も、うちはそんな会社だよなって思ってくれたりします。これらを実践するのは常に意識してますが、あまり意識していないとも言えます。あまりに染み付いているという感覚があるので、普通にやっているという感じでしょうかね。」

 

太田「一方で、“これはやっちゃいけないな”っていう行動を見る事ってありますか?」

てんちょ
「はい。ごく稀にあります。」

 

太田「その時はどう働きかけるんですか?」

てんちょ
「気づいた時に、すぐその場で、僕は本人に伝えます。「ちょっとあれは感情的になりすぎて相手に対して敬意がなかったよね」とか。「次から伝え方に気を付けた方がいいと思うよ」とか。「社員は家族」「同僚への敬意」などの価値観が我が社にはありますから。直接会えなければ、メールで連絡します。状況が把握できない時はユニットディレクターっていうチームリーダーがいるので、チームリーダーにすぐ話をして、「僕はそう思ったけどそれは僕の勘違いかな?」だとか、「ちょっと気にかけた方がいいよ」だとか、を伝えます。そして、すぐリーダーから本人に時間を空けずに気軽に伝えるようにしています。」

 

太田「なるほど。ちゃんと相手に対して感じたことを言う、

   ということを実践されてるのですね。叱る時ってあるんですか?」

てんちょ
「ほとんどないですね。昔は全然こんな状況ではないので、しょっちゅう怒鳴り散らしていたんですけど、今はもうみんなが素敵すぎて叱るという感覚がないんですよね。私が叱るという時はモラル的なところだとか社会人として、という時です。例えば、同僚への敬意を欠くようなひどいことを言った時だとか陰口や悪口など、です。陰口や悪口っていうのは、その人がいないところで言うから陰口や悪口になるのであって、その人の前で言うようにすれば、それは意見であったり提案であったり、ちょっと温度感を変えて相手に対して言うように配慮すると思うんですよね。 同じ行動をとるにしてもその人の前で言うのと陰で言うのとでは大きな違いになる。「陰口や悪口はだめだよ。それは許さないよ。でも意見や提案はフラットな環境の元で言えるからお互いが納得するまでやった方がいいよ。」こんな感じですね。」
2019/03/07 インタビュー
インタビュアー:株式会社ピグマ すごい会議コーチ 太田智文、石田博士
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