経営の桁を変えるには?
株式会社ヤッホーブルーイング 代表取締役社長
 井手直行様インタビュー (3/3)


経営にブレイクスルーが起これば、売上の桁が変わる。
この連載では、現実に桁を変えた経営者にインタビューし、どのように桁を変えたのか、そのプロセスでいかなる課題に直面し、どう向き合って、どう乗り越えたかを解き明かしてゆく。

インタビュー回答者:井手社長(てんちょ)、熊谷さん(どんちゃん)
インタビュアー:石田、太田

■ 株式会社ヤッホーブルーイング

代表: 代表取締役社長 井手直行
設立:1996年
業務内容:クラフトビール製造および販売

住所: 本社
   〒389-0111長野県軽井沢町長倉2148

    佐久醸造所
   〒385-0009長野県佐久市小田井1119-1

    佐久事務所
   〒385-0009長野県佐久市小田井1077-14 アース精工様内

    東京営業所
   〒151-0051東京都渋谷区千駄ヶ谷1丁目9番1号ヒルズ葵402

   URL:https://yohobrewing.com/


第三部:8年間の赤字からの脱出。チームビルディングが成功の鍵。


太田「御社の文化がどのようにして作られたのか? そこが成功の秘伝のタレですね。」
てんちょ(井手社長)
「元々は創業から8年間赤字だったんですよ。途中、地ビールブームがあった時でも赤字で、2004年まで赤字だったんです。2005年からインターネット通販をやり始めて、そこから業績が良くなりだしました。インターネット通販は私と中途で入社した方と2人で行っていまして、通販に関わる2人はですごく忙しくて大変でした。しかし、赤字の状況を脱するきっかけにするために一生懸命仕事をしていましたが、陰で他のメンバーから「井手が通販で売ってくるから忙しくなった」とか「急に残業が増えてものすごく嫌だ」とか「通販のせいで休日出勤になっちゃった」だとかを言われていました。本当は自分達は売上を上げてるから、みんなから喜ばれるはずなのに・・・。
こういう状況で2008年に社長になるまでずっと通販は成長が続いていたんですけれども、忙しいのは2人のまま。これはみんなでやっていかないとやっぱり限界で、私も社長になったので通販からは外れないといけない。全員で一丸となってやらなければいけない。そこで、私が社長になったので、チーム作りをして、もっとみんなで仕事をしようよ!という方向に舵を切ったんですけども、やればやるほどドツボにはまって、みんなは冷ややかになるし、僕が一生懸命チーム作りをやろうとすると、嫌がって僕を避けるようになっていきました。
そういう状況が続いていた時に、楽天市場さんの主催する講座で、チームビルディングのプログラムがあり、それの評判がすごく良かったんです。すごい大変だけど、いいチームを作る、すごい研修だと。お金がかかるし3ヶ月のプログラムなので3ヶ月も現場を抜けられないなと思っていたんですけど、いよいよ我流では無理になってきたので、そこに参加して、3ヶ月間、のべ5日間の研修で、みんなで一丸になると信じがたいようなエネルギーを発揮されるんだということを体感したんですよ。人生が変わるくらいの衝撃だったんです。今のヤッホーブルーイングにはこれが必要なんだと確信しました。次に、これを社内にどうやって持ち込もうかと考えた時に、何を血迷ったか、自分が講師役で全く同じことを3ヶ月間やるということを考えたんですね。当時の講師役の二人からは、「そんなことをやるやつは歴代でいない」と言われたんですけど、我流で見よう見まねでやってみることにしました。社内のメンバーに、「本当に一緒に協力してやってみたいという希望者とやらないと意味がないので・・・やってくれる人!」って言ったら7人手を上げてくれたんです。私を入れて8人。当時20人弱の会社なので、約半分近い人間が3ヶ月間の間に5日間仕事を抜けて、しかも通常業務の中で、そのような活動を続けるんですよ。そうすると参加しているメンバーは、悪戦苦闘しながら研修をやるんですけど、参加していない人からは大クレームなんですよ。当たり前なんですけど。“ただでさえ忙しいのに、 あんたたち何で仕事抜けて遊んでるのよ”と、すごいクレームがありながらも、そういう人達に説得しながら続けました。そして、それを卒業生が現場に持ち帰って日々の活動でチーム作りのことを少しずつやっていく、それが大混乱のうちに1回目が終わって、翌年に第2回をやって、3回目、3年くらいやっているうちに、だんだん卒業生がチーム作りをうまくやって成果を出し始めたんです。そうして3年くらい経ってくると、だんだんみんなが“これって良い活動なのかもしれない”って思いだしてきて・・・それで3年かかったんですよ。その3年間2008年から売上が横ばいなんですよ。その後。チームができてきたので売り上げがグンと上がったんですね。そんな葛藤があって、諦めずにやった3年間があって、チーム作りがあって、今はそのチームビルディングがさらに進化していって、僕が主催するのは去年で9回目、9年目になります。9年連続毎回手を挙げてくれた人間に私が講師役で、今もやり続けています。明日もチームビルディングプログラムがあるのですが、その活動は全て私も参加します。私は膨大な時間をチームビルディングに費やしてます。」

 

石田「その3年間、努力されて桁が変わったなっていう瞬間はどういう瞬間ですか?」

てんちょ
「チームビルディングをしていた時に大きい成果が出だして、数字で言うと普通は1+1は2じゃないですか。ですが普通の会社はうまくいかなくて1+1が0.7くらいになるんです。なんなら一人でやった方がいいじゃん、みたいな。2人でやると余計に手間取って0.7ぐらいしかできないから1人でやった方が1出るからいいと。ですが、そこそこうまくいくと、1+1が1.5ぐらいになり始めるんです。これが1+1は2だとか、もっとうまくいくと、3とか4になることがチームビルディングではあるんですよね。人数以上の力を出すことができる。そういうのがだんだん出てきていって、これは間違いないと思って3年間辛抱強く継続しているうちに、どんどん成果が出てきて、急成長したっていうところは桁が変わったって言えると思います。
さらに言うと、今ほとんどの活動は僕が全然タッチしていない状況で行われていて、 それがすごい成果を出しながらみんな楽しそうに前のめりになっていって、あんまり僕が関与する必要がないような状態になったのは急成長でしたね。ほとんど僕の介入なく勝手に皆が考えて企画して実行して喜んで、自走しだすんです。みんな僕がいようがいまいが関係なくやっています。笑。」

 

石田「桁が変わった瞬間って会社にどんな変化が起こりましたか?」

てんちょ
「社員たちが、自分たちが考えてやったことがうまくいく、だとかうまくいかないだとか、自分たちで修正して成果を出していくということの自信と喜びと学び、この辺が自発的に出てきたのがすごいなと思います。そういう変化が“働きがい”になっていったりだとか、自分たちの成長に繋がると思うんですよね。言われたことだけやると、そんなに楽しくないというか。自分たちの場合は大きな方向性だけ示して、そこの中で自分達が考えてやっていくと上手くいきますし学びにもなりますし、できたら喜ぶし、上手くいったから次はこんなことをしてみようかとか、うまくいかなかったらじゃあ次はこんな修正をしてみようとか考えるし、成長するし成功体験もチームでやっているから共有できて楽しい、となる。
その結果が、「働きがいのある会社」ランキング 3年間で審査を受けさせて頂いてるんですが、初年度からベストカンパニーに選ばれて、その後も3年連続で選ばれたことからも言えるように、働きがいに大きく繋がっていくと思います。創業から8年間はどん底で誹謗中傷含めてひどい状態で、会社の朝礼も“お通夜ですね”みたいなことをスタッフから言われていたんです。それが今は働きがいがある会社。しかも「働きがいがある会社」ランキングのベストカンパニーに選ばれているのはほとんどが東京の会社で、ほとんどがホワイトカラーの会社なんですよね。コンサルとか外資系企業だとか IT 企業とか。僕らは田舎の製造業でオフィスも狭いし、充分にモノがあるとは言えもない、暑い寒い。そういうオフィス環境などは少し点数が低いんですけれども、「やりがい」があるからトータルで言うと、働きがいがあるんです。」

 

石田「桁を変えるのには、何が大切だと思いますか?」

てんちょ
「社長の自分自身が一回、体感をする。それで腹落ちしたら、諦めずに一心不乱に追求していくっていうことは、振り返ってみると大事でしたね。多分、自分自身が体感していなかったら、 チーム作りの大切さっていうのが分からないから、途中ですぐ諦めていたと思うんですけれども、自分が体感していたから、“これが本当にうまくいったらすごいことになる”と、諦めずにうまくいくまで続けようということができました。」

 

石田「まずは体感するっていうことなんですね。」

てんちょ
「あとは自分自身がチームを信じられるかどうかっていうことだと思いますね。僕は体感したから信じられたので、それは違う形でも信じることができるのであればいいんでしょうけど。 」

 

石田「最後に、御社のビールを飲んでいる消費者の皆さんにお届けしたい幸せって何ですか?」

てんちょ
「お届けしたいいろんな幸せがありますけれど、ストレートに「ビールを飲んで美味しい」とか「こんなビールの味は知らなかった」といったビールのバラエティを提供すること自体が、すごく喜びに繋がると思うし、やっぱりビール会社として、そこが中心だと思うんですよね。これらを、いろんな品質を追求しながら、美味しいビールをいろんなバラエティーで提供して喜んでもらうっていうのが大前提なんですね。この幸せをお届けする、というのが僕たちのミッションです。
それと、ビールの味以外でも幸せを感じてくれることがあると思うので、味だけではなくて、いろんなファンイベントやWEBのコンテンツや顧客対応の先ほどの感動の事例とか、いろんなサービスを通して感動を届けて・・・そして、ビールを中心にサービスを提供してお客様に幸せになってもらいたいです。
これからも、社員の皆が各自が担当の中で発想して、お客様に感動をお届けする。こういうことをやっていきます。」

 

石田・太田「本日はありがとうございました。」

2019/03/07 インタビュー
インタビュアー:株式会社ピグマ すごい会議コーチ 太田智文、石田博士
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