経営の桁を変えるには?
株式会社ヤッホーブルーイング 代表取締役社長
 井手直行様インタビュー (1/3)

経営にブレイクスルーが起これば、売上の桁が変わる。
この連載では、現実に桁を変えた経営者にインタビューし、どのように桁を変えたのか、そのプロセスでいかなる課題に直面し、どう向き合って、どう乗り越えたかを解き明かしてゆく。

インタビュー回答者:井手社長(てんちょ)、熊谷さん(どんちゃん)
インタビュアー:石田、太田

■ 株式会社ヤッホーブルーイング

代表: 代表取締役社長 井手直行
設立:1996年
業務内容:クラフトビール製造および販売

住所: 本社
   〒389-0111長野県軽井沢町長倉2148

    佐久醸造所
   〒385-0009長野県佐久市小田井1119-1

    佐久事務所
   〒385-0009長野県佐久市小田井1077-14 アース精工様内

    東京営業所
   〒151-0051東京都渋谷区千駄ヶ谷1丁目9番1号ヒルズ葵402

   URL:https://yohobrewing.com/


第一部:一人一人の社員のキラリと光る個性が、
究極の顧客志向に向かって、自ら考え行動する。そんな組織文化が我が社の魅力。


石田「御社の事業内容を教えてください。」
てんちょ(井手社長)
「事業内容はクラフトビールの製造と販売で、“よなよなエール”というのが看板ビールで、他にも“インドの青鬼”とか“水曜日のネコ”などのクラフトビールを全国展開しています。あとは地元、“軽井沢高原ビール”というのと、“軽井沢ビール クラフトザウルス”という軽井沢限定の製品が2シリーズありまして、これは地域限定でそこだけで販売をしています。そういったビールを造りながら、ビールを通して幸せになってもらいたいということを考えて活動をしております。」

 

石田「ありがとうございます。御社ならでは、の魅力を教えてください。」

てんちょ
「ビールにも反映されていますが、非常に個性的で独自の文化を持っている組織。これが一番の魅力でしょうかね。それがビールの味であったり、パッケージであったり、ネーミングであったり、プロモーションにも繋がっているという風に考えております。」

 

石田「独自の文化というのは具体的にどのようなものですか?」

てんちょ
「組織文化、明言しているのは“フラットな組織”です。その組織で“究極の顧客志向”を目指し、そして働き方は“自ら考えて行動する”。“仕事を楽しむ”。“切磋琢磨する”。そして“知的な変わり者”。この6つを組織文化と定めておりまして、ことあるごとにみんなに事例を交えて共有しています。
フラットな組織がベースにあって究極の顧客志向を目指していこう。働き方は自ら考えて行動し、互いに切磋琢磨しながら仕事を楽しむ。切り口は知的な変わり者を意識していこう、ということを明言しています。これをガッホー文化と言います。ガッホーというのは「頑張れヤッホー」を略した言葉です。笑」

 

太田「“知的な変わり者”と言う言葉はどこから生まれたのですか?」

てんちょ
「この言葉は、元々は、創業者の星野が(私は2代目社長なのですが、)、“よなよなエール”のターゲットは“知的な変わり者”だとって言っていたのです。そして、“知的な変わり者”っていうのは自分たちのことだなぁと私が思いまして、“よなよなエール”のアイデンティティーを組織文化に入れようと思い、私たちの文化に“知的な変わり者”という言葉を入れました。」

 

太田「なるほどですね。その“知的な変わり者”ってどんな人ですか?」

てんちょ
「 “知的”っていうのは辞書で調べると“知性があって知識が豊か”で、これはもう勉強するしかないですよね。常に、ヤッホーブルーイングの社員は勉強して努力して知的さを上げていく必要がある、ということです。“変わり者”っていうのは辞書で調べると“異端児”とか“型破り”って感じなんですね。日本社会って横並びじゃないですか。学校もそうです。ある常識のレベルに近づくと「すごいね」「優秀だね」って褒められるんですけど、常識を超えた途端に「ちょっとお前出過ぎるから目立ちすぎるからやめておけ」とか「目をつけられるぞ」とか「そこまではやりすぎだぞ」とか言われて出る杭を打たれるのですけど、それを僕たちは“良し”としよう、と。その人自身の個性が仕事を通して貢献できるような強みに変換していって、それを伸ばしていって“あいつ変わったなぁ”と。しかも“知的である”と。そんな人間がいっぱいいて同じ方向を向いていたらすごい組織になるという意味で“知的な変わり者”としています。」

 

太田「素敵ですね。ありがとうございます。」

 

石田「“究極の顧客志向”の“究極”って言葉が面白いと思ったのですが、

       これはどういうイメージですか?」

てんちょ
「顧客志向の会社って表向きではいっぱいあると思うのです。「弊社は顧客志向です!」みたいなね。実際には顧客志向なのかって思うところはあるのですけど、究極っていうのは他がやらないくらいの顧客志向でいよう、感動を与えよう、ということです。我々はビールの製造業ですが、自分たちを「ビール製造サービス業」という言い方をしています。インターネット販売もやっているからそういう考えになったのですが、ビールを造るだけじゃなくてサービスも含めてお客様に届けるところまでを見たときに、感動をお届けして、「ここまでやるのだ!」というところまで普通にやっちゃおう、と。そういう意味での究極です。」

 

太田「なるほどですね。では、“究極の顧客志向”の事例をいくつか教えてください。」

てんちょ
「例えば、先週の土日に中途採用説明会を開催しました。そのときに、ある通販営業チームの社員が自分の仕事を説明していたのですが、これは究極の顧客志向だな、と思った事例が話されていたので、それを話しますね。
こんな話でした・・・。弊社は「よなよな月の生活」といって毎月ビールが届く、年間契約のサービスを提供しています。1年間の契約を一度結んだら、よほどのことがない限り途中解約はお受けしないサービスです。ある時、一人の会員の方から年間契約を解除したいというご連絡がありましたので、「なぜ契約を解除されたいのですか?」とお聞きしたところ、「南極探検隊に選ばれて南極に1年間行かなければならない。可能であれば取り寄せたいのですが、物理的に飲めない」ということでした。そこで、「わかりました」と言ってお受けしたのと、毎月会報誌を入れて会員にお送りしているのですが、その方は毎回楽しみにしていただいていたとのことでしたので、南極でWi-Fi が繋がってデータ通信はできるということでしたので「会報誌をデータ化して毎月お送りしますよ」という話をしました。さらに、「南極にはいつ行かれるんですか?」とお聞きしたところ、「●月●日に行くんだ」とおっしゃったので、その日に空港にお見送りにサプライズで行って、「これ飲んでください!」とビールの手土産を持っていったらとても感動されて、そうしたら南極に到達した際に、南極でよなよなエールを飲んでいる写真を送ってきてくれました。これが、その時頂いた写真です。」

 

コーチ一同「おー、すごいですね!」

てんちょ
「それ以外にもこのような話がたくさんあるんですが、普通なかなかそこまではやらないじゃないですか。お客様に喜んでいただくために、“サプライズでこんなことしたい”、なんていうのがいっぱい社内に溢れてまして、自分で考えて、誰の指示も仰がないで、私もなんとなくは聞いていたんですけど、こういう写真を見たりエピソードを聞いたりして、改めて“うちの社員はすげえなぁ”と思いましたね。」

 

石田「究極ですねぇ。」

 

2019/03/07 インタビュー
インタビュアー:株式会社ピグマ すごい会議コーチ 太田智文、石田博士

第二弾はこちらからご覧になることができます。

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