組織マネジメントにおける7Sモデルとは?導入のポイントまで紹介!

2025/9/9

こんにちは。株式会社ピグマです。
現代の経営環境は市場の成熟、人口減少、デジタル化の加速といった要因により複雑化しています。その中で、組織の競争力を維持するためには、戦略や制度の整備だけでは不十分です。社員の価値観や組織文化といった目に見えにくい要素も含めて一体的に変革を進める必要があります。
この背景から、戦略や構造といった「ハード面」と、価値観や人材などの「ソフト面」を統合的に分析できるマッキンゼーの「7Sモデル」が再評価されています。7Sを活用することで、経営方針と組織行動の整合性を高め、持続的な成果につなげる道筋を描けます。
この記事では以下の内容を整理しています。

・7Sモデルの基本的な枠組みと要素
・活用場面と導入ステップ
・実際の企業事例と他フレームワークとの比較
・成功のポイントと活用上の注意点

組織マネジメントにおける7Sモデルとは?

7Sモデルは、マッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱した組織分析のフレームワークです。組織の成長や改革を成功させるには、経営戦略や制度といった「ハード面」だけでなく、価値観や人材といった「ソフト面」を含めた総合的な視点が欠かせないという考え方に基づいています。ここでは3つの観点から整理します。

・マッキンゼーが7Sモデルを提唱した背景
・7つの構成要素の内容
・ハード面とソフト面の違い

マッキンゼーが提唱した背景

7Sモデルは1980年代初頭、世界的コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーのトム・ピーターズ氏とロバート・ウォーターマン氏によって発表されました。当時、多くの企業は戦略や構造の変更を中心に経営改革を進めていましたが、実際には思うような成果を上げられない事例が相次ぎました。
そこで両氏は、企業変革が成功するためには「ハード面」だけでなく、組織文化や価値観といった「ソフト面」も同時に調整する必要があると指摘しました。7Sモデルは、この考え方を体系化し、7つの要素を相互に関連づけて分析する枠組みとして設計されています。
この背景を理解すると、7Sが単なる分析ツールではなく、組織変革を実効的に進めるための実践的な指針であることが分かります。

7つの要素

7Sモデルは以下の7つの要素から成り立っています。

Strategy(戦略):組織の方向性や市場での競争方針
Structure(組織構造):部門配置や権限分配などの仕組み
Systems(システム):業務プロセスや評価制度
Shared Value(共通の価値観):組織文化や理念
Style(スタイル):リーダーシップやマネジメントの特徴
Staff(人材):人材の規模や特性
Skills(スキル):組織や個人が持つ能力

7つの要素は相互に関連し合っており、1つを変更すれば他の要素にも影響を与えます。そのため、7Sモデルを用いた分析では全体のバランスを重視することが求められます。

ハードとソフトの違い

7Sモデルの大きな特徴は、要素を「ハード面」と「ソフト面」に区分している点です。
・ハード面:戦略(Strategy)、組織構造(Structure)、システム(Systems)
・ソフト面:共通の価値観(Shared Value)、スタイル(Style)、人材(Staff)、スキル(Skills)
ハード面は比較的形に残りやすく、変更や測定がしやすい特徴があります。一方でソフト面は数値化が難しく、浸透や定着に時間を要する傾向があります。組織改革の成功は、この2つを一体として調整できるかどうかに左右されます。
したがって、7Sモデルは単なる診断ツールではなく、ハードとソフトの両面を調整し、組織全体を最適化するための指針として用いることが有効です。

7Sモデルの活用シーン

7Sモデルは、経営戦略の整合性を確認する場面や人材育成の計画策定、さらには特定業界における組織改善など、多様な場面で応用されています。単に組織を分析するだけでなく、変革を実効性のあるものにするための枠組みとしても利用されています。ここでは代表的な活用シーンを整理します。
・組織改革や経営戦略の整合性
・人材戦略や組織文化との連動
・業界別応用(例:医療・看護分野での活用)

組織改革や経営戦略の整合性

7Sモデルは、組織改革の方針と経営戦略の整合性を確保するために活用されます。企業が新しい戦略を策定しても、組織構造や人材のスキルが整わなければ成果は限定的です。7Sは、戦略を軸に他の要素を調整し、全体の一貫性を高める役割を果たします。
例えば、新規事業を推進する際には戦略だけでなく、権限の配分や意思決定プロセスも見直す必要があります。その際に7Sを用いれば、戦略と組織設計の間に生じるギャップを早期に特定し、対策を講じることができます。こうした整合性の確保は、持続的な成長の前提条件となります。

人材戦略や組織文化との連動

人材戦略や組織文化を経営戦略と連動させるためにも7Sモデルは有効です。多くの企業では制度設計や教育計画を整備しても、社員の価値観や組織文化に反映されないケースが見られます。7Sはソフト面に着目し、共通の価値観やマネジメントスタイルを組織全体に浸透させるための手掛かりを提供します。
具体的には、リーダーシップスタイルと社員の行動特性を整合させることで、戦略実行力を高められます。また、共通の価値観を重視することで、部門を超えた協働が促進され、組織全体の一体感が高まります。これにより、戦略と人材施策が乖離しない状態を実現できます。

業界別応用(例:医療・看護分野での活用)

7Sモデルは業界特性に応じた応用も可能です。特に医療や看護の分野では、患者中心のケアを実現するために、組織文化や価値観の共有が重視されます。7Sを活用することで、医療現場における人材配置やチームの連携方法を改善し、サービスの質を高められます。
また、教育機関や非営利組織でも7Sは有効に機能します。戦略目標に対して組織文化や人材の能力が適切に調整されることで、限られた資源を最大限に活用することが可能となります。業界を問わず、ハード面とソフト面の両立が必要な環境では7Sの適用価値は高いといえます。

7Sモデルの分析方法と導入ステップ

7Sモデルを実務に取り入れる際は、理論を理解するだけでなく、分析から導入までのプロセスを体系的に進めることが重要です。手順を明確にすることで、組織全体が同じ方向を向き、変革の実効性が高まります。ここでは主なステップを整理します。
・分析の進め方(現状把握〜課題抽出)
・ワークシート・テンプレート活用法
・導入時の注意点(落とし穴と対策)

分析の進め方(現状把握〜課題抽出)

7Sモデルの分析は、まず現状の把握から始まります。各要素について現状を可視化し、相互の整合性を確認することで、強みと課題が浮かび上がります。その際、戦略が現場で実行されているか、組織構造と人材配置が適切かといった観点が重要です。
次に、要素間で矛盾や不一致がないかを検討します。例えば、戦略が顧客志向であっても、評価制度が短期的な売上重視に偏っていれば整合性は取れません。こうした不一致を明確化することが課題抽出につながります。
最後に、改善が必要なポイントを優先順位づけし、実行可能な施策に落とし込む段階に進みます。課題を段階的に整理することで、変革プロセスが具体化します。

ワークシート・テンプレート活用法

分析を効率的に進めるためには、ワークシートやテンプレートを活用することが有効です。7つの要素を一覧化し、現状と理想の状態を比較することで、課題の特定が容易になります。
表形式のシートを使えば、各要素ごとに担当者の意見を集約しやすく、議論の土台を共有できます。特に部門横断的なプロジェクトでは、情報の見える化が進むことで合意形成が円滑になります。
また、テンプレートを繰り返し活用することで、進捗管理や改善サイクルの定着にもつながります。形式を標準化することで、分析が属人的にならず、組織全体での活用度が高まります。

導入時の注意点(落とし穴と対策)

7Sモデル導入の際には、いくつかの落とし穴があります。まず、形式的に要素を埋めるだけでは意味が薄く、実際の行動や制度に反映されない危険性があります。また、ハード面の改善に偏り、ソフト面の要素を軽視すると、改革が短期的なものに終わります。
この問題を避けるには、定量的な指標だけでなく、組織文化や価値観の浸透状況を評価に組み込むことが必要です。さらに、経営層が積極的に関与し、部門ごとの意識の差を埋める工夫が欠かせません。
加えて、改善施策は一度で完了させるのではなく、PDCAサイクルを前提に継続的に見直すことが求められます。短期的な成果にとらわれず、長期的な組織の成熟を目指すことが成功の鍵となります。

具体例から学ぶ7Sモデル

7Sモデルを理解するには、理論だけでなく具体的な事例を踏まえて考えることが有効です。実際の企業がどのように7Sを活用しているかを把握することで、抽象的な概念が実務に直結する形で理解できます。ここでは代表的な例を3つ取り上げます。
・ユニクロに見る7S分析の実践
・マッキンゼー事例:組織変革の基本手法
・共通の価値観(Shared Value)の浸透に成功した企業例

ユニクロに見る7S分析の実践

ユニクロは、グローバル展開を進める過程で7Sモデルを意識した組織づくりを行ってきました。戦略として「ライフウェア」という明確なブランド方針を掲げ、その実行に合わせて組織構造をグローバル基盤へと最適化しました。さらに、オペレーションを標準化するシステムを導入し、国や地域を超えて統一された品質を維持しています。
一方で、スタッフ教育や人材のスキル開発にも注力し、共通の価値観を浸透させる取り組みを実施しました。このように7つの要素を整合させたことが、ユニクロの持続的成長を支える要因となっています。

マッキンゼー事例:組織変革の基本手法

7Sモデルを提唱したマッキンゼー自身も、クライアントの変革支援でこのフレームワークを活用しています。大規模な組織改革を行う際には、戦略と組織構造だけに注目するのではなく、リーダーシップスタイルや社員の意識まで含めて一貫性を持たせることを重視しています。
たとえば、戦略目標を明確に掲げるだけでなく、それを実現するスキルやシステムを整備し、同時に価値観を共有させる仕組みを作ります。これにより、表面的な改革ではなく持続的な変化を定着させることが可能になります。

共通の価値観(Shared Value)の浸透に成功した企業例

7Sモデルの中でも、特に重要とされるのが「共通の価値観(Shared Value)」です。ある企業では、経営理念を明文化するだけでなく、日常業務に落とし込む取り組みを行いました。研修や評価制度を通じて価値観を浸透させた結果、部門間の連携が強化され、組織全体の一体感が高まりました。
この事例は、価値観が単なるスローガンにとどまらず、制度や行動に反映されたときに初めて実効性を持つことを示しています。Shared Valueを中心に据えることで、他の要素の整合性も高まり、長期的な成果へとつながります。

他フレームワークとの比較

7Sモデルは単独で活用できる強力な枠組みですが、他のフレームワークと比較することで、その特性や使い分けがより明確になります。特に組織分析や経営戦略の策定では、複数の手法を組み合わせることでより精度の高い判断が可能です。ここでは代表的なフレームワークとの違いを整理します。
・SWOT分析との違い
・バリューチェーン分析との組み合わせ
・4P分析や他のマーケティング手法との併用

SWOT分析との違い

SWOT分析は、強み・弱み・機会・脅威を整理して戦略を検討する手法です。一方、7Sモデルは組織内部の要素を対象とし、戦略実行のための整合性を重視しています。
SWOTは外部環境と内部資源を対比することで方向性を導きますが、具体的な実行段階では不十分な場合があります。その補完として7Sを活用すれば、戦略を実現するために組織のどこを調整すべきかを明確にできます。つまり、SWOTが「方向性」を示すのに対し、7Sは「実行基盤」を整える役割を担います。

バリューチェーン分析との組み合わせ

バリューチェーン分析は、企業活動を主要活動と支援活動に分けて競争優位の源泉を特定する方法です。これに対し、7Sモデルは組織の仕組みや文化に焦点を当てています。両者を組み合わせると、価値創造の流れと組織体制の両面から改善策を検討できます。
例えば、バリューチェーンで物流やマーケティングの課題を特定した場合、7Sを使って組織構造や人材スキルとの整合性を確認することで、より実効的な改善施策につなげられます。分析の粒度が異なるため、補完関係にあると言えます。

4P分析や他のマーケティング手法との併用

4P分析は、製品・価格・流通・プロモーションというマーケティングの基本要素を整理する手法です。外部に対するアプローチを考える際に有効ですが、内部の組織体制との連動を説明する力は限定的です。
この点で、7Sモデルを併用すると、マーケティング施策を支える組織の仕組みや文化が適切に整っているかを確認できます。特に新規市場参入やブランド戦略を展開する場合には、外部施策と内部体制を両立させることが成功の条件となります。

7Sモデルを効果的に活用するために

7Sモデルは組織を多角的に分析できる有効な枠組みですが、理論を理解するだけでは成果につながりません。実際の活用では、文化や価値観を扱う姿勢、導入プロセスの工夫、改善サイクルの継続が欠かせません。ここではそのポイントを整理します。
・組織文化・価値観を扱うポイント
・他部門を巻き込む導入プロセス
・継続的な改善につなげる仕組み化

組織文化・価値観を扱うポイント

7Sモデルの中でも「共通の価値観(Shared Value)」は特に重要です。戦略や制度を整備しても、文化や価値観が組織に根付いていなければ改革は形骸化します。価値観を定着させるには、トップマネジメントが率先して行動で示すことが不可欠です。
また、価値観を評価制度や教育研修に組み込むことで、社員の行動に具体的に反映させられます。形だけのスローガンに終わらせず、日常業務に浸透させることが改革成功の条件となります。

他部門を巻き込む導入プロセス

7Sモデルを導入する際は、経営層だけでなく現場部門を巻き込むことが欠かせません。一部門だけで取り組むと、要素間の調整が不十分となり成果が限定されます。全社的な取り組みとすることで、要素間の整合性が高まり実効性が増します。
導入プロセスでは、部門横断のチームを設置し、共通の指標や言語を用いると効果的です。特に戦略や価値観の共有は、複数の部門が協働する土台となります。現場の理解を得ながら進めることで、抵抗感を最小限に抑えられます。

継続的な改善につなげる仕組み化

7Sモデルの活用は一度きりで終わらせてはいけません。環境変化に応じて見直しを行い、継続的な改善につなげることが必要です。定期的に要素間の整合性を点検する仕組みを作ることで、組織の柔軟性が高まります。
具体的には、年次計画や評価制度に7Sの観点を組み込み、PDCAサイクルを回すことが有効です。また、外部の視点を取り入れることで、自社では気づきにくい課題も明確になります。継続的な改善を前提とする姿勢が、7Sを活かす最大のポイントです。

まとめ

7Sモデルは、戦略や制度といった「ハード面」と、価値観や人材といった「ソフト面」を同時に調整できるフレームワークです。組織改革や経営戦略の実行を支える有効な手段として、多くの企業で導入されています。
導入の成否は、共通の価値観を組織に浸透させられるかどうかに大きく依存します。ハード面の改革だけでなく、文化や人材への働きかけを並行して行うことで、持続的な成果につなげることが可能になります。
さらに、事例やテンプレートを参考にしながら、自社の現場に即した形で柔軟に活用することが重要です。形式的に導入するだけでは効果が限定的になるため、PDCAサイクルを前提に改善を継続する体制を整える必要があります。

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