多くの中小企業では、教育といえばOJTに依存しています。OJT自体は実務を通じて即戦力を育てやすい反面、教育を担当する人材の力量や余裕に左右されます。担当者の指導方法が属人的になると、同じ職場でも成長速度に差が生まれます。
体系的な教育制度が整わない背景には、専任の人事担当者や研修部署を置けない事情があります。その結果、研修カリキュラムや評価基準がないまま現場に委ねられ、教育効果が持続しません。
実際に、東京商工会議所の調査では「研修体制が整っている」と答えた中小企業は3割未満にとどまっています。教育制度の不在は、短期的にはコスト削減に見えても、長期的には人材定着率や業務品質の低下を招きます。
改善策としては、小規模でも共通研修資料を整備したり、外部リソースを活用することが現実的です。オンライン学習や合同研修の導入はコストを抑えつつ、教育の標準化を進める手段になります。
また、教育時間が取れないことは短期的な業務効率を優先する姿勢につながりやすく、育成を中長期的な投資と考える文化が育ちにくい点も問題です。特に人材不足の状況では即戦力を求める傾向が強まり、教育を省略する悪循環が発生します。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)によると、従業員300人未満の企業では「研修に時間を確保できない」と回答した割合が大企業より約8%低い結果が出ています。教育の優先度が下がると、社員が学ぶ機会を失い、モチベーション低下につながります。
改善の第一歩は、教育を業務の一部としてスケジュールに組み込むことです。週1回でも1on1を実施する、研修時間を就業時間内に確保するなど、小さな積み重ねが有効です。
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